*記事内に広告が含まれています

彼岸花って毒がある?縁起悪いの?ヒガンバナの豆知識

秋のお彼岸近くなると、彼岸花の名所の話題が取り上げられますね。
でも、彼岸花って縁起悪いって聞いたような?
彼岸花にはいろんな話があるんです。まとめておさらいしてしまいましょう!

スポンサーリンク

彼岸花(ヒガンバナ)ってどんな花?

彼岸花(ヒガンバナ)は、秋のお彼岸(秋分の日)ごろになると真っ赤な花を咲かせる球根植物です。(ヒガンバナ科)
中国原産で、朝鮮半島、日本全国にみられます。

花の時期になるとつぼみをつけた茎が何もないところからスッと伸びてきます。
葉は花が枯れたあとに地上に姿を表し、冬の間茂って、春になると枯れてしまいます。
決して葉と花が出会うことのない花なんです。

韓国では「葉は花を思い、花は葉を思う」という意味で彼岸花を「相思華(サンサファ)」と呼びます。ロマンチックな名前ですね。

日本の彼岸花は古くに(縄文時代といわれている)中国から持ち運ばれたと言われていますが、中国の彼岸花は種子をつけます(通常の2倍体)。
日本の彼岸花は3倍体といって、遺伝子的に種子をつけることができません。球根の鱗片で繁殖しています。
タネをつけることができないにもかかわらず花には甘い蜜があるのでアゲハチョウがよくやってきます。

特に球根に心臓系の毒(アルカロイド)を含むため、植えると土の中のミミズやモグラが彼岸花を避けることから害獣除けになると田んぼの畔や墓地の周囲に人の手で多く植えられました。そのため、現在でも田畑や用水路、河川の周り、寺社の周りに多く見られます。

彼岸花は毎年、秋の彼岸の頃に花を咲かせます。これ毎年ほんとうに不思議なんですよね。
植物は日夜の時間・気温の上下・湿度・雨量といった環境を感じ取って、毎年同じ季節に花を咲かせます。
「暑さ寒さも彼岸まで」というように、秋の彼岸(秋分の日)を過ぎると気温がぐっと下がってきます。
彼岸花の場合、気温が高く昼の時間が長い夏が終わり、気温が下がってきて昼夜の時間が同じになる頃をめがけて花を咲かせているのでしょう。

  

 

 

彼岸花には100を超える別名がある

彼岸花には、地域によってさまざまな呼び名があって、その数は100を超えると言われています。一説には1000以上とも??

「彼岸花」という名前には、秋の彼岸頃に咲くことと、食べたらあの世(彼岸)行きの2つの意味があるようです。

いちばん有名と思われる別名【曼珠沙華(まんじゅしゃげ)】は、サンスクリット語で「天上の花」を意味します。(とても良い意味)ですが、曼珠沙華以外の呼び名は不吉なものが多いです。



<そのほかの彼岸花の別名一例>

死人花・地獄花・幽霊花・毒花・痺れ花・手腐花・手焼花 …毒や墓から来たと思われる名前。姑花とか舅花とかもあるようです…
 
天蓋花・剃刀花・雷花・提灯燈籠・提灯煌煌・野松明 …見た目からと思われる名前

御盆花(おぼんばな) …旧暦の8月15日頃(現9月10~10月5日頃)に咲くためだと思われます

花知らず葉知らず・親死ね子死ね …相思華と同じ由来と思われるけどなんかコワイ

狐花・狐の松明・狐の提灯・狐の花火・狐のかんざし・狐の扇・狐のロウソク・狐のタバコ・狐の嫁籠(よめご)
…狐シリーズは見た目やイメージからでしょうか。美しさに感銘したことと妖しさが入り混じったすてきな表現だと思いますワタクシ

ちなみに英語では、蜘蛛のような見た目から (red) spider lily と呼ばれます。 

  

個人的には、【曼珠沙華(まんじゅしゃげ)】呼びが良いなと思っていましたが、狐シリーズも良いですねえ神秘的です。
まさに神様が創造したとしか思えないこの美の造形。ほんとうに綺麗ですよね!

 

彼岸花が縁起が悪いと言われる理由は

彼岸花は全草に毒があり、特に球根に強い毒があります。
彼岸花をかじると痺れたり吐き気をもよおし、球根を食べると死に至る場合もあるため、恐れられていたことでしょう。
その毒性から、またモグラ等の害獣除けに墓地に多く植えられたことから、彼岸(あの世)の花、死人花、幽霊花…のように呼ばれていったのではないでしょうか。

墓地に咲く真っ赤な毒花…なので、縁起が悪いと感じる面はあるでしょう。けれども現代では、花の美しさから、群生する名所が知られるようになり、観光地として彼岸花の名所をアピールするようになったため、悪いイメージは払しょくされ「キレイな花」という面が印象として強くなってきたのではないでしょうか。

真っ赤な彼岸花を花束にして贈るのは不吉感があるかもしれませんが…。

ちなみに、お花屋さんには、真っ赤な彼岸花の切り花も鉢植えもあまり置いていないです(球根はあります)。
(2010年頃まではあまり流通していませんでした、2024年も店頭ではあまり見かけません、もっと後はどうなるか分かりませんが)

彼岸花は植物的に言うと「リコリス」という植物なんですが、同じリコリスの違う色のもの(白・ピンク・黄色など)は切り花・鉢植えともよく出回っていて、ふつうに贈り物にも使われます。
真っ赤でなければ悪い印象も少ないのではないかと思われます。花屋さんで黄色やピンクのリコリスが避けられるということはありません。

  *リコリスについて詳しいことは↓あとでお話します

 

 

彼岸花の毒ってどんな毒なの?

彼岸花は、植物的に言うと「リコリス」という植物になります。
彼岸花の学名= Lycoris radiata  (リコリス属のラディアータ種)学名はラテン語です。
「リコリス」はギリシャ神話の女神の名前から、「ラディアータ」は英語だとradiationで意味は「放射」です。花が放射状に広がるようすからつけられたようです。

リコリス属(Lycoris)の植物が持つ毒が「リコリン」で、彼岸花にも全草に含まれていて特に球根に多いです。
植物自身が、動物に食べられるのを防ぐため(自身の身を守るため)に毒を持っているのです。

リコリンはアルカロイド系の毒で、摂取すると吐き気、嘔吐、痙攣などを起こします。
彼岸花の葉をかじると痺れることから「痺れ花」等の名がつきました。

致死量は10gとかなり多いため即亡くなるほどの強毒ではありませんが、中毒で亡くなる方も。
リコリス属の植物が持つ毒なので、水仙、タマスダレ、ハナニラなどの誤食中毒の原因でもあります。

一方でせきや鎮痛、降圧などの薬としても使われます。生薬名を「石蒜(せきさん)」といいます。

 

毒があるから田んぼや墓地の周囲を囲むように植えられた

毒草=悪いもの というわけではなく、メリットもあるわけです。
彼岸花は田んぼや墓地の虫や獣避けとして使われました。
人だけでなく、動物にとって毒なので、彼岸花を田畑の周囲に植えることで作物を守ることができました。

そのため人の手でたくさん植えられ、秋になると真っ赤な花がたくさん咲きました。
それは美しくも、不気味にも見えたことでしょう。実際毒ですしね。

毒だから作物ではない=年貢を納めなくて良かった

彼岸花は毒草なので、育てても作物としてカウントされませんでした。
彼岸花の球根は毒抜きをすると食糧にすることができるのですが、年貢がかからない!
田んぼの周囲に多く植えられたのは、害獣避けだけでなくいざという時の食糧だったともいわれています。
実際飢饉のときに多くの命を救ったのも彼岸花です。

いざという時には毒抜きして食べたといわれる

彼岸花の持つアルカロイド系の毒は、水に溶けるため、水に浸けて洗い流すことができます。
そのため、球根を毒抜きすれば食料として食べることができます。
飢饉のときや戦後の食糧難のとき、人々は彼岸花の球根を毒抜きして食べ、飢えをしのぎました。
原産地の中国でも食用にもされているそうです。
とはいえ。毒抜き方法も調べればわかりますが、食べないことをおすすめします!
毒抜き失敗すると中毒になってしまいますので;

 

 

現代では、秋の花の代表

そんな歴史を持つ彼岸花ですが、現代では「美しい秋の花」の代表格として有名ですね。
お月見の頃合いにも重なるので、お月見花として飾っても綺麗です。

我が家でも、彼岸花とニラの花+ねこじゃらしでお月見花にしたこともあります↓ 

タネをつけることができないにもかかわらず、人の手で植えられてここまで増えた彼岸花。
現代ではその美しさをめいっぱい楽しめば良いのではないかなと思います。

 

 

秋のお花見を楽しみながら歴史を伝える 

秋におさんぽすれば出会うキレイな花。
子どもに「昔の人はね~」とこうした歴史を話し伝えながらおさんぽするのも良いのでは^^

 

お米や人の暮らしと深くかかわってきた花。我が家では毎年おさんぽして見に行きます。
通学路にもいっぱいあるので子どもは毎日見てるんですけどね。
それでも家族で見に行く日も作っています。

 

 

 

 

8月に咲く彼岸花もある

10年ほど前、8月に彼岸花が咲いているのを目撃して「!?!?!?」となって調べたところ、通常の彼岸花より1か月早く、8月後半~に咲く彼岸花もあることを知りました!

8月に彼岸花が咲いているのを見たらそれは
シナヒガンバナ(志那彼岸花)・別名コヒガンバナ

なんと、シナヒガンバナは タネができます。
2倍体なんです。
タネができて、1カ月早く咲く。それがシナヒガンバナ。

8月末撮影。 このあと、普通の彼岸花が咲く頃にはタネができます!

調べると一回り小型、と書いてありますが、見た目、ほぼわからないです。
早い時期に咲くことと、タネができることが見分け方だと思います。

 

 

ヒガンバナ属(リコリス)

ヒガンバナの学名は Lycoris radiata(リコリス・ラディアータ)ですが…「リコリス」って聞いたことありませんか?
お花屋さんで、切り花や球根で売られています。
お花屋さんで良く売っているのはピンクや黄色のリコリスです。

ヒガンバナもリコリスの中の赤い花の種類になります。

リコリスの中に、赤い「彼岸花」
オレンジ色の「キツネノカミソリ」
黄色の「ショウキズイセン(リコリス・オーレア)」
ピンクの「ナツズイセン」
白い彼岸花「シロバナマンジュシャゲ」
そのほか園芸種のいろいろな「リコリス」があります。

園芸種のリコリスは花屋さんに切り花・鉢植え・球根で並んでいます。
ピンクの園芸種とショウキズイセン(リコリス・オーレア)がよく販売されています。

左:ピンクの園芸種リコリス   右:ナツズイセン

 

白い彼岸花(シロバナマンジュシャゲ)はショウキズイセンとの交配といわれる 

最近は白い花の彼岸花も珍しくなくなってきましたね。
真っ白ではなく、淡い黄色を帯びたシロバナマンジュシャゲは、黄色い花を咲かせるリコリス「ショウキズイセン」との交配で生まれたと言われています。

左:黄色い花のショウキズイセン(Lycoris aurea)  右:シロバナマンジュシャゲ

 

園芸種のリコリスは白い花のものも販売されています。
下の写真の場所の彼岸花は通常の赤・白の隣に真っ白い花も咲いていたので、園芸種を植えたのかもしれませんね。 

 

彼岸花の群落の中には、園芸種を植えたのか、突然変異なのか??変わった色やかたちの花を見かけることがあります。田んぼの畔の中は突然変異かな…と謎が生まれますが、どれも綺麗でため息が出ます。

左:赤い彼岸花と白花曼珠沙華が混じったかのようなサーモンピンク    右:花びらのふちが白い花が混じっている

 

 

ヒガンバナ科の植物は79属! 

お花屋さんでの花の名前の意味

ちょっと余談ですが お花屋さんでは花の分類名のどこを呼んでいるのか?という話。

植物の分類は、研究が進むにつれときどき変更がありまして。(動物もですけど)
ちょっと前までは「新エングラー」または「クロンキスト体系」の分類で図鑑などに書いてありました。
現在は「APGⅢ」という分類になっています。
分類を調べると、この3つの分類でどこにあたるか、全部書いてあって混乱したりします;

ヒガンバナ科は、以前はユリ目やユリ科の中に入っていました。
そのくらい、見た目はユリ目の球根の植物にも似たものがたくさんあるのですが
現在の分類では、「キジカクシ目の中のヒガンバナ科」になっています。

「目」は「め」ではなく「もく」と読みます。「目(もく)」っていうのは「科(か)」の上の分類です。
人間の場合「霊長目 ヒト科 ヒト属(Homo)ヒト(sapiens)」
よく聞く「ホモ・サピエンス」は「属と種」の部分を呼んでいます。

ヒガンバナの場合、「キジカクシ目 ヒガンバナ科 ヒガンバナ属(Lycoris) ヒガンバナ(radiata)」

お花屋さんの店頭に並ぶときの名前は基本 属名です。
+種 が書いてあります(種名は書いていないこともあります)

彼岸花のようにあまりにも種名が有名だと、属名をすっとばして種名で呼ばれる場合もまれにあります。

科「キジカクシ」・属「リコリス」・種「オーレア」
科「バラ」・属「バラ」・種「カクテル」
科「ユリ」・属「チューリップ」・種「アンジェリケ」

<種名があまりにも有名なケースの例>
科「キク」・属「ヘリアンサス」・種「ヒマワリ」
この場合、ヒマワリは完全別枠です。花屋さんではヘリアンサスを飛ばして「ヒマワリ」と呼ばれ、さらに細かい品種名が書かれます。
ラテン語ではannuusですが、日本語の「ひまわり」を使いますね。
お花屋さんでは、日本語名のほうが有名であれば日本語、日本になかった花はラテン語の属名をそのまま使って呼ぶケースが多いです。
そして「ヘリアンサス」の中のほかの種類を「ヘリアンサス」と呼びます。中には「ヒメヒマワリ」種など種名で呼ばれるものもあります。


と、ちょっと話が逸れましたが、ヒガンバナ科の中には、お花屋さんでよく見る「属」がたくさん入っているのです。
どの花も彼岸花にちょっと似ています。
彼岸花と似た見た目の花はだいたいこの「ヒガンバナ科」の中、または「ユリ科」の中に入っています。

そんな「ヒガンバナ科」のお花(属)の有名どころを紹介しますね。

  

ネギ属(Allium アリウム)

アリウムです。お花屋さんによく行く人なら知っている名前かと思います。
ギカンジウム、丹頂アリウム・アリウムコワニーはもとより
野菜のネギやニラ、ニンニク、ノビル
も入ります。

野菜のニラの花。彼岸花と同時期に咲いています。雑草としてもあちこちに生えています

 

スイセン属(Narcissus)

知らない人はいないでしょう、水仙もヒガンバナ科です。
水仙も毎年、食中毒でニュースになりますね。

ラテン語の「ナルキッソス」はギリシャ神話に登場する、自分の姿に恋をして恋焦がれて死んでしまう青年の名前です。
死後水仙の花に姿を変えたと言われています。お花屋さんではもっぱら、日本語の「水仙」ですね。

 

 

ネリネ属 (Nerine)

見た目はネリネが一番リコリスとよく似ていて、おしべの短いナツズイセン等とは違いがわからないほどです。
ネリネのほうが少し咲く時期が遅いものが多いです、秋深く~冬が旬になります。

「ダイヤモンドリリー」もネリネの一種です。

 

 

 

そのほか、こんなお花たちがみんなヒガンバナ科の仲間たちです。
大小あるけれど、みんな咲き方が似ていますよね。

クンシラン(君子蘭)

ハマユウ(浜木綿)

アマリリス属

タマスダレ(ゼフィランサス属)

ハナニラ(イフェイオン属)

アガパンサス属

リューココリネ属

キルタンサス属

ツルバキア属

スノードロップ

スノーフレーク

 

知れば知るほど、どんどん不思議が増えていくお花の世界
もっと知りたい!って調べるほうに行っても
楽しく見ても、飾っても、育てても、自由ですよ~
あなたの好きなように、花に触れてくださいね。
お子さんがいらしたらどうぞ0歳からご一緒に。


 

 


 

タイトルとURLをコピーしました